感情心理学を学ぶ駆け出し研究者兼マーケターのブログ

大学院と組織開発ベンチャーに属しながら感情心理学を肴にする日々の苦悩と葛藤を綴るブログです。27歳ですが37歳に見られます。

『感情の輪』理論に学ぶ、『エモーショナルデザイン』の効用とは。

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The Interaction Design Foundation

 

『エモーショナルデザイン』って、ご存知ですか?

最近、UX関係者の間で、この『エモーショナルデザイン』が注目されているそうです。

 

エモーショナル、つまり『感情』。

今回はそんなことについて記していきます。

 

 

『エモーショナルデザイン』って?

『エモーショナルデザイン』について、以下に記すページではこのように定義されています。

ユーザーの感情を考慮したデザインを取り入れることによって、期待を超えたユーザー体験を提供しようとする試みです。

人には感情があります。どれだけ人が欲しいと思っているものでも、潜在的に好きじゃないとか、無意識下で拒否感が少し出てしまうとか、そんな言葉にしにくい要素が邪魔して購入してもらえなかったり、利用してもらえなかったりします。

人と人の関係性でもあるかもしれませんね。他の人から「Aさんっていう新しい上司は本当に良い人だよ!部下になれるの羨ましい!」と言われようが、実際に会った瞬間に内心「うわ、この人の声というか、なんか苦手、、、」みたいな些細なところで拒否感が出てきたりします。

そんな、移ろいやすくかつ個人個人で異なる感情というものをデザインに取り入れること、それが『エモーショナルデザイン』です。

 

UXって?

一応、UX、つまりユーザーエクスペリエンスについても定義をば。

Wikipediaにはこのように記されていますね。要は、利用する人がその物を通してどんな経験をするか、という言葉の総称でしょうか。

ユーザーエクスペリエンス(英: user experience)とは、人工物(製品、システム、サービスなど)の利用を通じてユーザーが得る経験である。しばしば「UX」と略される。「ユーザー経験」「ユーザー体験」などと訳される。
よいユーザーエクスペリエンスを達成するために、ユーザビリティ工学、インタラクションデザイン、ユーザー中心設計 (UCD) あるいは人間中心設計 (HCD) などが実践される。

 

私はとくにUXを専門でやっているわけではないのですが、『エモーショナルデザイン』、つまり『感情』を物事の背景に入れながら物を作るという意味では、お仕事でさせていただいている事業開発も『エモーショナルデザイン』が必要ですし、そもそも私の事業では人の1対1のコミュニケーションを中心に据えていますので、そんな『感情』を考えることは、とても大切なことになのです。

 

 Don Norman氏による『エモーショナルデザイン』の考え方

 この『エモーショナルデザイン』、調べてみると、この世界ではDon Normanという方がとても有名なよう。

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by TED

お名前を見て思い出したのですが、以前横浜で大きなデザイン会社を営む知人と話している時に、「デザインの前に、これ読むのオススメだよ」と言われたこちらの本の著者の方でした。

 http://amzn.to/2yUAa9x

 

この方がおっしゃることを短時間で分かりやすく理解するには、以下のTEDの動画が一番最適でしょうか。

以下に簡単に要約してみますが、12分くらいの短い動画なので、ぜひご興味のある方は移動中にでも御覧ください。以下の内容を、いくつかの面白いデザインの事例を取り上げながら紹介なさっています。

・不安な時には脳の中で神経伝達物質が放出され深さ優先の思考をさせる。 楽しい時には前頭葉ドーパミンが放出され、脳は幅優先の問題解決をするようになり周りの刺激を受けやすくより自由な発想をするようになる。

・良いデザインとはコミュニケーションです。人の人の良いコミュニケーションを生みます。そして、コミュニケーションとは情動です。人の情動がまず最初に生まれ、その次に思考や行為が生まれます。

・そして、私たちの行うの処理は、基本的に無意識で自覚はありません。行動も無意識で自覚はありません。私たちのすることの多くは無意識で自動的な振る舞いです。無意識に生まれる情動が、体に作用するだけなのです。

・だからこそ、無意識に『これは素敵だ』『これは好きだ』という情動が生まれるようなデザインにしなくてはなりません。

www.ted.com

 

『感情』を理解するために役立つもの 〜『感情の輪』理論〜

 『感情』を理解したほうが良いのはわかった、でもそれってどうやるの、、、?

そんな言葉が聞こえてきそうですが、そのために役立ちそうなものを1つ紹介します。

 

感情に関する研究の権威であるPlutchik氏の心理進化論、『感情の輪』理論です。

こちらでは、以下の10の提言をなさっています。

・感情は、動物が人間へ進化を遂げる場合と同様に、あらゆる種類の進化段階において見られます。
・感情は、種類ごとに異なる進化をしており、表現の仕方も多種多様だと考えられます。
・感情は、大きな環境の変化に直面した際に、生物が生存するために発達させた生存対応です。
・感情は、種類ごとに異なるメカニズムで表現されますが、すべての生物において共通にみられる感情の要素もあります。
・主要な基本感情は8つあります。
・基本感情以外の感情は、8つの基本感情同士を組み合わせたものか、もしくは基本感情の1つ(または組み合わせなど)から派生したものです。
・ここで説明している基本感情は「理想化」された表現であり、なぜそのような性質になるかを定義していく必要がありますが、すべてを正確に説明することはできません。
・各基本感情には対となる正反対の感情があります。
・感情は共通性で分類できます。
・感情は強さでも分類できます。

 

ここでいう基本感情と、その感情を組み合わせたものが、以下の図に表されています。

感情は、こんな組み合わせになっているそうですよ。かなり面白いですよねこれ、、、

期待 + 喜び = 楽観(対になるのは悲観)
喜び + 信頼 = 愛(対になるのは後悔)
信頼 + 恐れ = 従順(対になるのは軽蔑)
恐れ + 驚き = 畏敬(対になるのは攻撃)
驚き + 悲しみ = 悲観(対になるのは楽観)
悲しみ + 嫌悪 = 後悔(対になるのは愛)
嫌悪 + 怒り = 軽蔑(対になるのは従順)
怒り + 期待 = 攻撃(対になるのは畏敬)

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by UX MILK

 

詳しい内容については、以下の記事内を御覧いただきたいのですが、こんな理論があると、製品をデザインしている中で「この部分でこんな感情を持ってほしいな」と思ったらこの表を見ながら思索を深めるきっかけになりそうですね。

(ちなみに、私の会社でお客様がサービスを通して経験する流れを想像して設計する時には、感情と思考と行動を分けて流れを構築しており、その感情部分を考える際には、このような感情のリストを見ながら考えを進めていたりします。)

uxmilk.jp

 

いかがでしたか?

これを実際のデザインや行動に落とし込むのには結構まだ踏むべき段階がありそうですが、少し在るべきデザインの姿に近づいているような気がしてきますよね。

そして、上記の組み合わせあたりはそもそもとても面白いという、、!

ここらへんのお話、今後深掘っていきたいなと思いますので、この続きはまた別のブログ記事にて。

 

なお、上記の『感情の輪』の記事の原文はこちらだそうです。英語だと、また違ったニュアンスがありそうですよね。

www.interaction-design.org