感情心理学を学ぶ駆け出し研究者兼マーケターのブログ

大学院と組織開発ベンチャーに属しながら感情心理学を肴にする日々の苦悩と葛藤を綴るブログです。27歳ですが37歳に見られます。

『リカレント教育の大切さ』が先行することで、人の思考は結局奪われていくのではないか、という話

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先日、こんな記事がyahoo!上に掲載されました。 

headlines.yahoo.co.jp

 

一部抜粋すると、、

 出産・育児で退職した女性や定年退職した高齢者らがビジネスの技能を磨く「リカレント(学び直し)教育」推進のため、政府は2019年度以降に約5000億円を投入する方針を固めた。

 現在の関連予算は年間100億円規模だが、大幅に増やす見通し。リカレント教育の拡充は、「人づくり革命」実現に向けて政府が今月上旬にまとめる2兆円規模の政策パッケージに明記される。

 

要は、学び直すことに対してお金を投入しますよ、ということが書き記されています。

これ、『リカレント教育』というものらしくてですね、確かに大人になってからの勉強も大事よねという風潮があることは認知しながらも、不勉強ながら私はこれについてあまり知らなかったので、これを機に調べてみました。

 

すると、なんだかそもそもこれをやることに焦点を当てることはどうなのかな〜と思う自分がいまして、今日は、そんな『リカレント教育』について書き記していきたいと思います。

 

 

リカレント教育』とは?

では、改めて、『リカレント教育』とは何を指し示しているのでしょうか。

『日本の人事部』の記述を見てみると、こう書き記されています。

リカレント教育」とは、経済協力開発機構OECD)が1970年代に提唱した生涯教育の一形態で、フォーマルな学校教育を終えて社会の諸活動に従事してからも、個人の必要に応じて教育機関に戻り、繰り返し再教育を受けられる、循環・反復型の教育システムを指します。リカレント(recurrent)は、反復・循環・回帰の意味で、日本語では回帰教育、循環教育と訳されます。教育制度はもとより、労働関連政策や企業の雇用慣行なども併せて再編し、教育機関での学びとそれ以外の労働を主とする諸活動とを、個人が生涯を通じて交互に行えるように、社会体制を改革するのが「リカレント教育」の目指す戦略的構想です。

「リカレント教育」とは? - 『日本の人事部』

 

また、この『リカレント教育』という呼称が定着した大元になったOECDの報告書の中には、こういった定義がされています。

「すべての人に対する、義務教育または基礎教育終了後の教育に関する総合的戦略であり、その本質的特徴は、個人の生涯にわたって教育を交互に行うというやり方、すなわち他の諸活動と交互に、特に労働と、しかしまたレジャーおよび隠退生活とも交互に教育を行うことにある」

ちょっと日本語訳がわかりにくいですが、要するに、「個人が社会の急速な変化に対応していくためには、生涯を通じての教育が必須である」ということですね。

 

 『100年時代の人生戦略』の設計の中に、『リカレント教育』は存在する

このような話を語る上で、いまどこでも持ち出されるのがこちら。

リンダ・グラットン氏の『LIFE SHIFT』 

 http://amzn.to/2yW6Qzk

 

この中の話で中心部分をほんの触りだけ書くと、、、

20世紀には、人生のステージは大きく3つに分けられていた。教育のステージ、仕事のステージ、引退のステージの3つ。

でも、これからは違う。平均寿命が延び、今までは珍しかった100年生きるということが、ありふれた話になってくる。要するに、今まで人生80年くらいだと考えられていたその先、残り20~30年をどう生きるか、そしてその長さの人生がある時に、100年をどう過ごすか、それは誰しもに直面する問題だ。

より良い100年を過ごすためには、3ステージモデルから脱却し、マルチステージの新しい生き方・働き方を考えるべきである。エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオ・ワーカーという人生の新しいステージだ。

 

そして、この新たなステージがこちらの3つ。

エクスプローラー(探検者)
様々な可能性を探し試す、探検・探索を行う人たちのこと。具体的には、新しい町に移ってその土地の人達と知り合ったり、知らない国を旅して自分の生き方について考えるたり、そして知識やスキルの再習得に取り組む時期もここに。


■インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)
組織に雇われず、独立した立場で生産的な活動に携わる人達のこと。いわゆるフリーランス的な感じですね。

ポートフォリオ・ワーカー
異なる活動を同時並行で行う人たちのこと。例えば、有給の仕事が週4日、3日は音楽活動をし…という具合です。

 『リカレント教育』を受ける人は、この中だとエクスプローラーと、ポートフォリオ・ワーカーに該当するでしょうか。 

 

日本では、どんな状況なのか

人口の減少と若者教育

 Classiという学校教育のICT活用を支援するクラウドサービスを運営する会社の代表、加藤氏はこんな資料(一部抜粋)を経産省で発表しています。

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日本は圧倒的に人口が減少し始めている、と。

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そんな中、大学入試改革を行います。

 

■Classiによる学校教育への取り組み

http://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170905004/20170905004-3.pdf

日本の大人は学ばない

動画授業と教材で「仕事に生きる」知識・スキル・考え方を学べるサービスを運営する株式会社スクーの代表、森氏は、『オトナになってから学ばない日本』と称して、こんなことをおっしゃっています。

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http://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170905004/20170905004-6.pdf

 

数的思考力の平均では群を抜いて良い結果の日本でも、新しいことを学ぶことへの肯定感がとても低く、それに比例するかのように30歳以上の成人の通学率は他先進国と比べてダントツ低いと。

 

取り組み始める大学も登場

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そんな中、大学で『リカレント教育』のための課程をつくるところも登場。結構いくつかあるみたい。

www5.jwu.ac.jp

 

個人の視点に立ってみると、そもそも順番が逆なのではないか

ザーッと見てきましたが、いかがでしょうか。

日本がどれだけこの分野において劣っているのか、そして少しずつそれを是正していこうという流れがあるということはご理解いただけたのかもしれません。

 

ただ、これをパラパラと調べていたりしてとても違和感があったのは、なんだか教育を受けることが大事、というような考えが強めだなということ。もちろん国など大きなところとしてはその体制を整えていくのが大切だと思うので素晴らしいことだとは思いつつ、果たして教育体制を整えただけで結果として世の中のためになるのだろうか、と。

だって、単に教育を受けたからといって、世の中に役に立つ力や思考力が鍛えられるわけではないことは、今までの日本の教育体制が表してしまっています。また、得てして教育機会や能力だけあっても、あたかも自慰行為かのように自分だけで完結させて満足しているだけで、実際他の人や社会のために有益なものをもたらすことができるかは分からないと思うのです。結局、教育教育と言って自分で考えて他者に、外の世界にどう貢献するかを深く考えることをせずに進めることは、『教育を受けるのが大事』という固定観念を人に植え付けるだけで、人から思考を奪うことにはならないでしょうか。

 

私としてはこの『リカレント教育』と共に、『自分との対話』『自分と世界の関係性』『自分が目指すもの』が何かを考え、悩み、試し、失敗し、という試行錯誤をひたすらに続けていくことが急務だと考えておりまして。

教育を受けるということは手段にすぎず、何よりも大切なのは、1人1人の人生の目的と、それが世界に何をもたらすか、、、そんなことだと思うのです。

もちろん、そんな教育に対して、自分自身何ができるのか、そんなことも、考えていかねばならないなあとも、気がつくのですが。個人的にはそれも今後の課題の1つ、ですね。