感情心理学を学ぶ駆け出し研究者兼マーケターのブログ

大学院と組織開発ベンチャーに属しながら感情心理学を肴にする日々の苦悩と葛藤を綴るブログです。27歳ですが37歳に見られます。

「CES2018」最新のトレンドと注目ポイント< 2 >

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 さて、前回に引き続き、ラスベガスで参加してきた「CES」の最新トレンドと注目ポイントを記していこうと思います。

 

 

「CES2018」最新のトレンドと注目ポイント< 1 > - 「CES」最新トレンド

最新トレンドについては、前回の記事を御覧ください。

courage4u.hatenablog.jp

 

今回の内容は、そのトレンドの裏に隠れた注目ポイントです。

 

「CES2018」最新のトレンドと注目ポイント< 2 > - 「CES」注目ポイント

オープンイノベーション/コネクテッドインダストリー

今回のCESで各大手企業が強く推していたのは、これらの概念。多くの場所で、他社との協業を明記もしくは感じさせる記述がたくさんありました。

もはや様々なしがらみや硬さの残る社内で取り組み続けるのではなくて、他社と、資金もデータも人も技術も絡め合わせながら取り組まねば、新たなものは創造できないということでしょうか。

それぞれは以下のように定義されています。

 

「オープンイノベーション

もはや普通に言われるような言葉になりますね。イノベーションはモノとモノの境界線に生まれる(アウフヘーベン)とはよく言われることですね。

組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである
(Henry W. Chesbrough, 著書『Open Innovation』(2003年)

NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)がまとめた資料の一部が分かりやすいので、参考までに。

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http://www.nedo.go.jp/content/100790825.pdf

 

「コネクテッドインダストリー」

これは正確に言うと日本が提唱した概念/施策であり、同じ言葉で他国で語られることは現状ありませんが、実質的には国を超えて実施されていることなので、こちらに記します。なお、「オープンイノベーション」と広義では被る部分があります。というより、「オープンイノベーション」の中に「コネクテッドインダストリー」が含まれるというほうが正確でしょうか。

「オープンイノベーション」は各企業で繋がることで新たな価値を創造していくというように語られることが多いのですが、「コネクテッドインダストリー」はある特定の分野の産業を営む企業同士がデータを提供し合うことで課題の解決を図るというものです。

詳しくは、経産省がまとめた資料が分かりやすいので、参考までに。

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http://www.meti.go.jp/press/2017/10/20171002012/20171002012-1.pdf

 

実際には

CESの会場では、こんな会社でのそれぞれに関わる取り組みを見ることができました。

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LIVIOは米国のソフトウェア企業。大手自動車メーカー各社と組んで、自動運転におけるデータ構築などに取り組んでいます。

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NDIVIAは米国の半導体メーカー。こちらは自動運転の実証実験をするための仮想環境を構築していました。さながら映画『インセプション』のよう。

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Panasonicもランドローバーなどの大手自動車メーカーとのバッテリーの開発を行い、

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Qualcommは、Continental、エリクソン日産自動車NTTドコモ沖電気の5社と共に、車車間、路車間、人車間の通信を5Gで行う実証実験を、日本で初めて行なうと発表していました。また、その他20社ほどとも一緒に組んで行うことを発表しています。

 

技術と非技術の二極化

上記の「オープンイノベーション」「コネクテッドインダストリー」に当たるような企業も然り、もちろんCESでは最新技術を出し合う見本市。技術が光るのは、他にこんな企業がありました。(携帯の電源が切れて撮影できなかったのですが、赤外線で遠隔充電してくれるビーコンは刺激的でした。)

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DENSOは渋滞解消などのコネクティッドサービス実現に向け、量子コンピュータの実用化を目指したアルゴリズム開発などの取り組みを紹介していました。

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SONYでは、最近販売開始の発表があったAIBOをはじめとして、ダイナミックレンジでの撮影技術など、こちらはどこかと共に行うというより自社の技術を高め続けることに投資している傾向。凄まじく大きなスペースで、かなりの方がSONY製品を楽しんでいるのが印象的でした。

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これ社名を忘れてしまったのですが、この絵に見える画面、これTVなんです。LGも同じような表現をしていましたが、通りすがりの方がみんな見て「Cool!」「Amazing!」と全員が言っていました。

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LGのこの没入感ある通路はさすが。これ、全部画面でダイナミックな自然を常に流していました。この画面の曲線が素晴らしいです。

 

このように技術を前に出している企業が多く存在しつつも、とはいえ「いやそれ去年からあったよね?」というような技術を発表している企業も多く、例えば、VRやAR、ドローンやスマートホームの各デバイスはそのような印象。それぞれもはや想像しうるものはある程度製品化されており、そこからどう技術を尖らせていくのか、もしくは他がやっていない分野を開拓できるのか、その技術の差がよくも悪くもかなり顕著な会場でした。

 

思想化と非思想化の二極化

かなり顕著だったのが、各社の思想について。

もちろん技術の見本市ではあるのですが、この思想があるか否かというところがとても気になりました。

私の中だと、こんな区分で今回の会社を区切りながら会場内を見ておりました。

・思想と技術を両立させている会社

・技術を立てているが思想が見当たらない会社

・思想を立てているが技術が見当たらない会社

・思想も技術もあまり見当たらない会社

 

あまりに私見なのでこの記事では詳しい区分について記しませんが、いくつか写真と共に紹介。

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CANON。思想は壁に記してあるのですが、製品が会場中に配置されている中でこのような文字が壁にあっても多分これだとだれも読みません。あと、自社製品を使っていただくことでお客様含めどんな世界にしたい、という内容ではないです。

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HONDA。コミュニケーションロボ3E-A18を紹介し、人の感情を読み取りながら動作し成長するロボティクスへの取り組み。車やバイクという移動体ではなく、別の動くものという移動体を紹介してくれてとても素敵だなと思いつつ、社員さんたちに聞かないとこのロボティクスのことが分からなかったので、もったいない。。。

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CESはもちろん、こんな風にデバイスを作っている世界中のスタートアップも多く参加しているものの、仕方ないとは思いつつ、どうしても今の技術・製品で今これができますよ、という紹介が溢れていて、かつ製品もどちらかというとコモディティ化していました。もちろん、思想を伝えることだけが正義ではないと思うのですが。

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思想的にも技術的にも感激し、3日間通ったのがTOYOTA。詳しく書くと長いのでやめますが、このTOYOTAのコンセプトモデルと技術レベルを見て鳥肌が立っていました。社員の方数名ともお話させていただき、『TOYOTA らぶ!!!』な状態です。詳細はまた後日のブログで。

 

実用化へのイメージづけの有無

上記の思想に少し被るかもしれませんが、技術ある会社でも、それをどう実用化するの?というのを提示できている企業とできてないように見えてしまう企業に分かれました。

語弊があるのでこちらも詳しく記しませんが、上記の思想のところでの区分を踏襲すると、私の中では、最終的に会場の企業群は以下のような区分で分けられており、それを意識しながら会場を回っていたような状態です。

・思想と技術を両立させ、かつ実用化へのイメージづけができている会社

・思想と技術を両立させているが、実用化へのイメージづけができていない会社

・技術を立てていて実用化イメージはあるが、思想が見当たらない会社

・技術を立てているが実用化イメージも思想も見当たらない会社

・思想を立てているが技術が見当たらない会社

・思想も技術もあまり見当たらない会社

 

あくまで個人的意見ですが、やはり上記の区分の中だと、上層にいけばいくほど人が集まり、長く滞在し、見とれていたり聞き込んでいたりする人が多い印象でした。

なお、技術が尖り、そしてのその実用化のイメージがとてもつくものをいくつか下に挙げますね。

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TOYOTAの自動運転の体験はかなり刺激的でした。目的地設定とレストラン指定という、かなり具体的な技術を体験させてくれます。

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SONYのスピーカー兼プロジェクター。これを目の前にすると驚くのですが、360°全体から音が聞こえてくる感覚になります。というか、このスピーカーを見ずに目を閉じていたら、その音を感じるであろう場所にいる感覚にほぼ確実になりそうなイメージです。

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Intelの自動運転技術。車を模した空間の中で、見える全範囲に映像を投影しており、使用するイメージがとてもありました。

 

さて、 注目ポイントはここら辺にて。

では次回は、以下のラインナップでお送りします。3本立ての最後です。

 

「CES2018」最新のトレンドと注目ポイント< 3 > 歴史観とこれから

51年前当時

トレンドと参加社の変遷

今後の予測しうる世界

この内容はこちら ↓

courage4u.hatenablog.jp