『アートは人の潜在的な力を引き出すことができる』と確信した瞬間。
この前、学生たち向けの合宿で講師側をしていた時のこと、箱根のポーラ美術館で全員で鑑賞している時間があったのです。
その時に『アートは人の潜在的な力を引き出すことができる』と確信した出来事がありました。
『勇気さん、この階をまわってみて、なんだかすっごく気持ちがすっとしたんです。でもその理由が分からなくて、一緒に考えてもらえませんか?』
と声をかけてくれた大学生の女の子がおりまして。
『いいよ。この階の作品の中で、一番長い時間観ていた絵はどれかな?』と聞いて連れて行ってくれたのがこの上部の作品。
ピエール・オーギュスト・ルノワール 《レースの帽子の少女》 1891年
日本人もよく見る、ルノワールの作品ですね。
細かい話は個人情報なので伏せますが、この作品の前で5分くらいやりとりをしていたら、彼女は堰をきったかのように泣きながら、今の自分自身の不安と、それをどう解決したら良いかを悩んでいるということを話してくれました。
自分のことだけを考えるだなんて難しいので、その絵の中で一番好きなところはどこか、どこが気になるか、そこを観ながら得た感情は何か、その感情と同じような感情を過去に持ったことがあるか、その時はどんなことがあったか、そこでその感情を持ったのは具体的にどの言葉どのシーンどの表情どの風景だったのか、、、
そんなことを聞いていたら、自分からどんどん話していき、最終的には今の自分の不安との向き合い方、これからどうしていくのが良いか、全部自分で決めて話してくれまして。
話し切ったあと、こちらを向いて泣きながらもゆっくりと満足そうに笑ってくれたんですよね。
それが、本当に素敵でして。ああ、アートにはこんな力があるんだ、これがアートの力なのか、、、
とすごく感嘆してしまったのです。
まさに、『アートは人の潜在的な力を引き出すことができる』と確信したのです。
昨今では美術館や博物館も増え、毎回の展示会で超満員となるところも増えていますが、まだまだどうも「よかったね!」「楽しかった」「きれいだった〜!」という感想を超えて、それがどう自分の日々の行動から人生観に結びついているのか、というところまで昇華させられていないケースを多く観て(自分含め)、とても勿体無いなあと思っていたのです。
手法は色々あると思いますが、自分の心を奥底から震えさせ、自分の人生を変えてしまうようなアートとの出会いというのはもっとあって然るべきなのに、それがなかなか実現されていない。
もっと、人は前に進むことができる。
そう信じると共に、そうやって過去の作品が自分に勇気を与えてくれる、そんな世界を、仕組みを作りたいなあと、強く願うのです。