感情心理学を学ぶ駆け出し研究者兼マーケターのブログ

大学院と組織開発ベンチャーに属しながら感情心理学を肴にする日々の苦悩と葛藤を綴るブログです。27歳ですが37歳に見られます。

社員の職場復帰を成功させるために必要なこと〜見過ごされがちだが大切な4つの前提〜

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みなさんの周りで、会社を休んでいる人はいらっしゃるでしょうか。

休む理由は多々あると思います。

体調が悪い・旅行中・育児休暇中・ストレスが激しい、そんな理由があるでしょう。もちろん、他にも理由は多く存在するはず。

 

単純にその人の能動的な動機(旅行とか)であれば良いものの、それ以外に関しては、昨今の『働き方改革』の文脈の中で問題視される傾向が強くなってきました。

ただ、それに対して各社様々な試行錯誤をするものの、どのようにしたら解決できるかどうか、苦慮しているケースばかり見ます。

 

そこで、WHO(世界保険機関)から発表された概念や、日本での事例をはじめ、世界幸福度ランキングNo.1のデンマークで研究された『ストレスがなくなる働き方』という本の中身を交えながら紹介したいと思います。

 

ー目次ー 

 

健康経営とは

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もはや、「上記ということです!」

という感じなのですが、日本では2014年くらいから表で言われ始めた『健康経営』という概念があります。

簡単に言うと、『社員が健康であることは組織にとっても大事だよね、じゃあそのための施策を組織で打とうよ』ということでして。

 

最近では、経産省がその取り組みを表彰するような認定制度があったり、DeNA社はじめ各社の動きも活発になっています。

www.meti.go.jp

mirai.doda.jp

 

健康問題に伴う生産性の低下の概念『アブセンティーズム』『プレゼンティーズム』 

上記の健康経営の文脈で語られることの多い、健康問題に伴う生産性の低下

そんな健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標として、WHO(世界保健機関)によって提唱された概念が『アブセンティーズム』と『プレゼンティーズム』です。

それぞれ、こんな意味があります。

『プレゼンティーズム』:欠勤にはいたっておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態
『アブセンティーズム』:健康問題による仕事の欠勤(ひいては生産性の低下)

 

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そんな2つの概念ですが、実は結構昔から提唱されてまして、2004年には上記のような調査もされています。

ここで挙げられている『健康リスク』、1つも当てはまらない人はあまりいないのではないかと思うほど多岐に渡っていますよね。

これが全て、『アブセンティーズム』と『プレゼンティーズム』を引き起こす要因なのです。

本記事の最上部で記した「会社を休む」ことそれ自体での生産性の低下は、『アブセンティーズム』に当たりますね。

(ただ、上記の表を見ていただくと分かる通り、意外と『アブセンティーズム』より『プレゼンティーズム』の方が生産性損失が大きいのです。)

 

安易な対策が横行する現状

そんな風に概念としては形作られており、どんな国でもどんな仕事でも起きているこの健康が引き起こす生産性の低下の問題。

さぞかし対策が体系化されているのだろうと考えますが、もはや『なぜ?』というレベルで対策がそこまでされていません。

 

例えば、以下のような内容。

『日本の人事部』のHP内で誰でも人事に関わるようなことを相談できるようになっており、この内容はそこに記されていた1つです。経営者か人事の意見でしょうか。

遅刻という内容も含んでいるのでここまでの欠勤というところからは少しずれた内容も一部ありますが、その根本は社員の身体と心の健康状態が良くないというところ。

頻繁に生じる遅刻、安易な病欠への有効的の対策
当社はネット広告事業を営んでおり、比較的若い社員が多いためか、遅刻や安易な病欠に対する罪悪感が薄く、管理上好ましくない状況であります。
日々の指導により改めることが第一でありますが、制度上遅刻や安易な病欠を少なくする有効な方法がありましたらお教えいただきたいと思います。

なお当社では労働者不利益に配慮して、以下の方法を検討しており、これらの有効性や就業規則改定の有無についてもアドバイスいただければ幸いです。
①無遅刻無欠勤の社員に対し報奨的な意味合いで、1万円程度を給与にプラスして支給。但し電車遅延や有給休暇した場合は支給対象外。(遅刻しない社員を奨励して間接的に遅刻を減らす。)
②基準数値を明確化して賞与の査定項目として導入。例えば月3回以上の遅刻、病欠が有る場合は評価を強制的に一段階下げる等を明確に提示する。現状は賞与査定にあたり、勤怠は一般的な勤務態度の項目に含めて考慮しています。

 なお現状遅刻、欠勤については、原則としてその時間分を減給するか有給振替(半日単位)で対応させています。電車遅延等の不可避な事由による遅刻は減給対象外としています。

以上よろしくお願いします。

頻繁に生じる遅刻、安易な病欠への有効的の対策 - 『日本の人事部』

 

しっかりと読んでみると分かるのですが、もはや全て制度を創ることで対応しようとしているのです。
(この方の社員への信頼感の無さと、若さを下に見る感じもすごい気になりますが、、、)

(ちなみに、これに対する回答もたくさん各所からきているのですが、「それは法的に大丈夫です」「制度はもっとこう設計した方がいいです」などと、正直全く本質的でない回答ばかり。。。結構唖然とするレベル。)

制度があったとしても、単にお金を出すとか評価を下げるとか、そんなもので制御しようとしても人の思考や行動はネガティブな状態になるだけでしょう。むしろ、ネガティブなスパイラルが続くことがかなり予測できます。

 

生物心理社会的観点から見た、職場復帰に大切な4つの要素

そんな現状があるからこそ、もっと大きく捉え、欠勤の人、もしくは欠勤が続いている人が職場に戻るために何が必要かを挙げておく必要があるのではないでしょうか。

とはいえ、単に社内で制度を入れるだけではダメ、そして仮にどれだけ社員たちが自発的に作った制度だとしても(それが可能ならもはや最初から欠勤にならないようにも思いますが)、それでもダメ、すると職場復帰のためにはどんなことが大事なのでしょうか。

 

冒頭に記した『ストレスがなくなる働き方』には、こんな記述があります。

病気が治れば、スタッフは自然と戻ってくるのではないでしょうか?

数年前まではそうしたものだと考えられていました。ですから仕事を再開できるくらいに回復するまで休んでいいよ、というのが普通だったのです。しかし、もはやそのようなわけにはいきません。

今日、ストレスに起因する病欠からの職場復帰を成功させるためには、この病気を生物心理社会的な側面から理解する必要があります。「生物学的要素」(健康状態、症状の種類、ストレスの度合い)、「心理的要素」(症状があるとしても、本人に職場復帰への意欲があるか)、そして「社会的要素」(疾病手当に関する法律、治療を受けるための順番待ち、職場に置ける機会と障害)が、復帰がうまく行くかを左右するのです。

つまり、スタッフの健康状態が改善したから、あるいは意欲が復活したから職場に復帰できるという単純な話ではないということです。 

 

欠勤が終わり、会社に戻るというのはそこまで単純なものではないのです。

実際、仮に戻れたとしても継続して出勤し続けるというのはさらに難しいことなのです。

そして、これへの対策は単に上記の会社のように制度を整えるというだけではありません。

それ以外のものも含めて、この職場復帰に影響を与えるとされる4つの領域がその本には次いで記されていました。

 職場復帰を左右する4つの領域の要素

・本人(例:病気の理解、モチベーション、治療への取り組み方)

・職場:(例:ライン管理職、同僚)

・医療システム(例:治療法、治療を受けるまでの順番待ち、かかりつけ医)

・社会システム:例:ケースワーカー、疾病手当制度

 

この4つの中でいうと、会社の制度を整えることなんて、単に『職場』の項目に当たるだけだということが分かりますね。

もちろん、この中の医療システムや社会システムなんて会社の触れられないところではないか!と思われる方もいらっしゃるかと思いますので補足します。

そもそも、それらのシステムを会社でどうこう動かすという話ではなく、それらも本人の職場復帰にかなりの影響を与えているということを前提にして考えて行動しましょうよ、ということです。

 

その前提で考えて行動するには、本人の欠勤理由がどんなものなのか、それが世間的にどう思われているか、どうしたら治療できるか、本人はどれだけの金銭的損失になるのか、本人はどれだけ身体的精神的苦痛を受けているのか、何をどう助けて欲しいとと思っているのか、、、

そんな、この4つの領域にまたがるそのような内容をいかに把握できるか、そしてそれを前提としたコミュニケーションができるか、それがとても大切なのです。

 

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いかがでしたか?

言われてみれば「まあそうだよね〜」というような前提ですが、それでもこれらは実際の組織の現場ではないがしろにされがちな概念のはずです。

この4つの前提を理解した上で、具体的にどのように対応していくのが良いのか、、、

それは、また明日以降記していきたいと思います。

 

では、また次の『迷走めも』にて。