感情心理学を学ぶ駆け出し研究者兼マーケターのブログ

大学院と組織開発ベンチャーに属しながら感情心理学を肴にする日々の苦悩と葛藤を綴るブログです。27歳ですが37歳に見られます。

どうすればフロー状態をつくれるか?フローの研究者に聞いてきた@表参道

 

フロー状態、というと皆さんはどんな状態のことをイメージされますか?

 

フロー、、、流れる感じ?連続した感じ?

そんなものを想像なさるかもしれません。

 

具体的には、こんな状態のことを言うらしいのです。

・意識が最適化され、最高のパフォーマンスを発揮できる

・同時に心の充実感を感じられる

 

ランナーズハイとか、そう言う言葉がありますね。スポーツをしている時に、その中に没頭していく感じ。

スポーツだけに限りません。本を読んだり、仕事をしている中にでもフロー状態はあるでしょう。何かに没頭して、他のことを忘れひたすら集中していくあの感じ。

おそらく、皆さんもあるかと思います。

 

今日はそんな、フローについてのお話。

 

 

 脳神経科学者が話す『エクストリームスポーツ』と『僧侶』に共通するフロー状態とは?

これは以前とある脳神経科学者に聞いたことがあるのですが、フロー状態の最たるものが、エクストリームスポーツ(以下の動画のように、体1つでムササビのように飛んだり、命綱なしで高層ビルのてっぺんを登るような)の最中と、世界最高峰の僧侶の瞑想の最中らしいのです。

 

 

 

 

で、これが何かというと、どうやらある種の極限状態、死ぬかもしれないというような状態から、一気に息を抜いて精神を安定される瞬間があるそうです。

その瞬間がフロー状態らしいのです。

エクストリームスポーツの場合は、自らの命がこの一瞬の判断で消えるかもしれないという状態で。僧侶の場合は、世界の悲しみを自ら全て体感するような精神状態で。

そこから、フロー状態に入ります。

エクストリームスポーツの場合は、その開放感・爽快感・生きているという実感を得ると。僧侶の場合は、そんな世界でも落ち着いた心持ちで愛を持って受け入れていこうと。そんな状態になると、それはまさにフロー状態らしいのです。

すでに研究もされていて、彼らの脳波の状態と柔らかい恍惚とも言える表情が、完全一致するそうです。

 

なんだかとても不思議な、どちらかというと対局にあるかのようなこの2者ですが、彼らはそんな流れを踏まえた上でフロー状態。

つまり、こんな状態を結果として得ているらしいのです。

・意識が最適化され、最高のパフォーマンスを発揮できる

・同時に心の充実感を感じられる

 

 

「フロー状態」は、パフォーマンスを最大化してくれる

さて、こうもフローについて書いていたのは、昨晩、友人の世羅さんと堤さんが主催する

【フロー編】忙しくても心と身体に素直に生きる・働くためのトレーニング

というイベントに参加していたからです。

 

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私なりの解釈ですと、

 ・「フロー状態」をどんな目的のために駆使したいのか

 ・自分にどんな特性があるのか

これらがそもそもとても大切になってくるのだなと思いました。

 

イベントは、

 ・簡単なフロー体験ワーク

 ・自分がフローを探求し始めた理由

 ・フロー状態とは何か

 ・フローの歴史

 ・フロー状態に入るための17のトリガー

大きくこの5部構成です。

 

まず最初に、身体を使ったワークから始まります。

やはり誰もが知っている概念でもないですし、それを体感することが大事!という彼女の考えの元、2人1組になって1分間で片方が行う拍手を、もう片方が同時に真似ていくというもの。それを相互に行います。そのあとは、2人でアドリブセッションのごとく、拍手で心地よい音色を作っていくというもの。

実際にやってみると、とても難しいながらも、他のものに一切意識を向けずに集中しますので、ある種簡単にフローに入る準備をするというような状態になれます。

 

そのワークが終わって参加者の身体が温まってから、彼女の自己紹介と、自身の高校の部活時代のフロー体験という原体験に始まり、「フロー状態」とは何か?というインプットをまずしてくれます。

 

彼女の説明によると、フローの学術的な意味がこちら。

『全人的に行為に没入しているときに感じる包括的感覚』

ミハイ・チクセントミハイ

 彼女も言っていましたが、なんだかもはやとても難しい概念ですよね、、

 

で、その効果として挙げられていること(全て世界的なフローに関する研究所やマッキンゼーなどの企業が発表)がとても面白かったのです。

「フロー状態の効果」

・創造性/課題解決能力が4倍に

・経営者がフローに入れば会社の生産性が5倍に

・新しいスキルの学習スピードが2倍に

・モチベーションを高める5つの物質放出がある(ノルアドレナリンドーパミン、エンドルフィン、アナンダミド、オキシトシン

→結果、幸福感UP 疲労DOWN

 

それに続き、フローに関する研究の流れの説明です。

 

もともとは1956年に「幸せに関する研究」が開始され、それを1975年にまとめ上げたのが、ミハイ・チクセントミハイ

「名声の富も期待できなくても幸せを感じる瞬間がある」それが「フロー状態」だと定義した方です。

※『フロー体験 喜びの現象学』という、フローを学ぶ上で欠かせない本を書かれた方でもありますね。

http://amzn.to/2iciSPF

 

 そこから、脳波の関わりやチクセントミハイ以降の研究について話してくれました。

 

フローを引き出す17のトリガー

そんな流れの中、中心的な部分に話は進んでいきます。

フロー状態を作るためにはどんな必要な要素があるのか、何をすればフロー状態を作れるのか。

それには、17のトリガーがあると言います。

そして、それは心理的トリガー、環境的トリガー、社会的トリガー、創造的トリガーの4つに分類されるそうです。

心理的トリガーと環境的トリガーが、個人のフロー状態に紐づくもの、社会的トリガーが組織のフロー状態に紐づくもの、創造的トリガーがその両方に紐づくものだそう。

※細かい内容を入れてしまうとあまりに膨大になってしまうので、それぞれ項目だけ記していきます。

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心理的トリガー(1〜3)

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1.明確な目標

 「いま、何に取り組んでいるのか」「何のための取り組んでいるのか」を具体的に自覚する。

2.即時フィードバック

 設定した明確な目標に対し「どうしたらそれをもっと上手くできるか」をリアルタイムに把握し、結果と行動の因果関係を常に掴んでおく。

3.難易度と能力のバランス

 タスクの難易度を、ひるむほどではないが「少し手を伸ばせば届く」程度に調節する。

 

環境的トリガー(4〜6)

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4.影響の大きさ

 ハイリスク、ハイリターンな挑戦を設定する。

5.豊かな環境

 「新規性」「予測不可能性」「複雑性」の3要素が高い環境をつくる。

6.没入空間

 全身を動かして五感をフルに活用しながら、タスクに取り組める機会をつくる。

 

社会的トリガー(7〜16)

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7.明確な目標の共有

 組織としての共通の目標が何か、全員へ明確に共有をする。

8.良好なコミュニケーション

 定期的にフィードバックをしあい、活発にコミュニケーションを行う。

9.コントロール

 自分が信じることを選択し挑戦できる自由(自律性)、それを上手にやるスキル(専門性)を高める成長機会を共に提供する。

10.リスクの存在

 リスク(失敗する可能性)のあることに取り組む。

11.本気で集中する環境

 厳しい環境を自ら創り出す。

12.平等な参加

 集団の全員が、プロジェクトにおいて等しい量の役割を担う。

13.親密さ

 集団の中で共通の言語や知識ベース、暗黙の了解に基づく特定のコミュニケーションスタイルをもつ。

14.自我の融和

 チーム全体が謙虚になる。

15.傾聴

目の前の会話に完全に集中する。

16.Yes and...

会話を必ず「確かにそうだよね、それに加えて、、、」で始める。

 

創造的トリガー(17)

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17.パターンに気づき、パターンを壊す

 常に同じような角度から問題を解決しようとするのではなく、別の角度あるいはスタイルで攻めてみる

 

 

この説明を一部しながら、参加者でワークをして議論、その次の説明をしてから、また参加者でワークをして議論、、

というように会が進んでいき、一番最後にそれぞれが感想を述べて終了!というのが昨日の会の全容でした。

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個人的な感想

そんな2時間ほどを過ごし、いち参加者としての気づきをこちらにしたためておきます。

・そもそもなぜフローを学ぶのか?ということを最初に持っておかないと、単に理論だけ入れるという無駄なものになってしまう。目的大事。

・自分の特性(得意なこと/他の人にはできないけど自分はとても自然にできてしまうこと)が分かっていないとフロー状態のトリガーが引きにくい

・全トリガーを全て引けるようにすることは大事ではなく、その中でも向き不向きがあるので、それらの取捨選択する必要がある(不向きなところでフローになろうとしても難しい)

・個人のフローと組織のフローがあるというのは新鮮

・組織のフローを創る時も、それぞれの人員毎に向き不向きがある。それを全て把握した上で、1人1人が異なるトリガーを引けるようになったりするととてもバランスの良い組織のフローを構築できるのではないか

・人によってトリガーの捉え方が異なる(とある人は「これとこれは対局の概念だよね」と言うものを、私は「それ対局というより同じ方向にある気がするなあ」と思った、という)

 

主催の世羅さん・堤さん、ありがとうございました!