感情心理学を学ぶ駆け出し研究者兼マーケターのブログ

大学院と組織開発ベンチャーに属しながら感情心理学を肴にする日々の苦悩と葛藤を綴るブログです。27歳ですが37歳に見られます。

『逃げ恥』平匡さんの自尊感情を高めるために、みくりさんができること

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本日、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の再放送があり、気がつけば全て見てしまった自分がいました。

その中で、みくりさんが平匡さんの自尊感情の低さについて、自尊感情の高いイケメン風見さんを引き合いに出しながら言及する回がありました。

ドラマの中では、その自尊感情に対して、みくりさんがどうしよう、、、というシーンがありましたが、そんな平匡さんに対してみくりさんはどんなことができるのでしょうか。

 

 

 

自尊感情とは

そもそも自尊感情とはどんなものなのでしょうか。

コトバンクには、こんなことが記されています。

自分には価値があり尊敬されるべき人間であると思える感情のこと。アメリカの心理学者ジェームスによれば、自己概念に対する自己評価の感情であり、自尊感情の高低は「達成度/本人の願望」という式(つまり本人の願ったものがどの程度うまくいくか)によって決まってくるという。 学習行動においては、自尊感情が高い人は困難に出会っても粘り強く努力するが、自尊感情が低い人はすぐにあきらめてしまう傾向がある。 また対人関係においては、自尊感情の高い人は、他人からの賞賛や批判にさほど左右されず感情が安定しているが、自尊感情の低い人は、ほめられるとその相手が良い人に思え、けなされると悪い人に思えるようなところがあり、感情的にも不安定な傾向がある、とされる。

kotobank.jp

 

『自分には価値があり尊敬されるべき人間であると思える感情』

まさに、平匡さんに欠けているものでしょう。

 

ドラマ内では、この自尊感情が高い風見さんは”どんなことがあってもポジティブに捉える”とされ、自尊感情の低い平匡さんは”どんなこともネガティブに捉える”とされていました。

 

自尊感情”に関わる最も重要な性質とは

さて、とはいえ自尊感情というものは、どんな要素が影響しているのでしょうか。

 

日本の中で研究されている”自尊感情”の中でも、一番引用数の多い論文から引っ張ってきましょう。

その要素とは、”本来性”だそうです。

 

最良の自尊感情とは、特定の課題結果や達成に自己価値の感覚が随伴しておらず、文脈 によって変動することがなく、本当のあるいは中核的な自己によって自身が機能しているという感覚から得られるものとされている(Kernis,2003)。 この定義は様々な側面を含んでいるが、Kernis(2003)はその中でも最良の自尊感情の最も重要な性質としてauthenticityを指摘している。
Authenticityを日本語 に訳 せ ば、「確実性」「真正であること」などを意味し(小学館英和大辞典,1994),心理臨床の領域においては「本来性」と訳されている(心理療法事典1999)。

Kernis(2003)は、"authenticityとは日々の計画における個人の本当の、中核の自己による何ものにも邪魔されていない働きを反映するところのものに特徴づけられる"と述べている。

自分らしくある感覚(本来感)と自尊感情がwell-beingに及ぼす影響の検討(2005/伊藤正哉 小玉正博)

 

"本来性"とは

では、その”本来性”とは何なのでしょうか。

上記と同じ論文内に、以下の文節があります。

 

Truax &Carkhuff(1967)はauthenticityを"非搾取的な対人関係において自由で深く自分自身でいられる能力"と定義している 。簡潔にいえば、この概念は自分自身の意思や 気持ちに基づき素直に生きていることを意味する。このようなauthenticityの意味は、人口に膾炙している「本当の自分」や「自分らしさ」という言葉で表現されているものとかなり重なると考えられる。

自分らしくある感覚(本来感)と自尊感情がwell-beingに及ぼす影響の検討(2005/伊藤正哉 小玉正博)

 

『本当の自分』『自分らしさ』という言葉は分かりやすいかもしれませんが、ここで見逃してはいけないのが"非搾取的な対人関係において自由で深く自分自身でいられる能力"という部分の

”非搾取的な対人関係において”

というところ。

 

要するに、相手がいる状態の中で、『本当の自分』を言語/行動問わず開示できるようになるということになります。

 

みくりさんが平匡さんの”自尊感情”を高めるためにできること

そうしてみると、平匡さんはみくりさんに対して『本当の自分』を言語/行動問わず開示できるようになるだけでなく、その機会も必要になるということです。

ただ、奥手な平匡さんのことなので自分から機会を創ることも難しいし、『本当の自分』を認知することも難しいですよね。

その時にみくりさんができること、それは、みくりさん自ら『本当の自分』を開示するということに尽きるのかなあと、思ったわけです。

 

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世界的名著、社会心理学者のロバート・B・チャルディーニ氏の著書『影響力の武器』の中に、『返報性の原理』というものがあります。

これを簡単に説明しますと、恩を受けたら、恩を返したくなる、、、それに尽きるでしょうか。日本では、「人に何かしてもらったらお礼を」と教育された方が多い気もしますのでなんとなく分かるかもしれませんが、受け取った恩を、時には受け取った以上の恩で返したいと感じる自然な心理現象のことを言っています。

 

平匡さんの自尊感情を高めるために、この『返報性の原理』を駆使する、、、

つまり、みくりさん自ら『本当の自分』を開示するということです。

 

みくりさんと平匡さんが進んでいく6つのステップ

で、この『返報性の原理』は人との会話や関係性においても言えることでして、今回のみくりさんと平匡さんに当てはめると、以下のようなステップを踏みながら、平匡さんが『本当の自分』を言語/行動の開示を引き出していくことになるでしょうか。

 

1. みくりさんが常に平匡さんのそばに常にいること

2. みくりさん自身が先んじて『本当の自分』を認知すること

3. みくりさんが『本当の自分』を平匡さんに少しずつ伝えること

4. 平匡さんもみくりさんに『本当の自分』を伝えたいと少しずつ思うこと

5. 平匡さんも『本当の自分』を少しずつ認知すること

6. 平匡さんもみくりさんに『本当の自分』を伝え始めること

 

ただ、ここで問題なのは『本当の自分』『自分らしさ』ということをどう認知するのかということ。

これは開示してもらうというのとはまた別の関わり方をしなくてはなりません。

そもそもみくりさんも平匡さんも『本当の自分』をすでに認知しているのか、認知していないのか。

明日の再放送も観ながら、お二人の『本当の自分』を私自身見つけていきたいと思いつつ、今回はこの辺で。。。